健康を構成する主な要素は、運動・栄養・休養・睡眠・メンタルです。そしてこれらの要素は、おおよそ制御可能です。

ただし、独立して存在しているわけではありません。

一つの要素が変化すると、他の要素に影響し、その変化がまた別の要素に波及していく。そして変化した全体が、また部分へと影響を及ぼす。常に揺れ動いているシステムです。

つまり健康とは、全体は部分の総和であるという単純なシステムではなく、全体は部分の総和を超える複雑なシステムです。このような系のことを、複雑系と呼びます。

では、なぜこの視点が重要なのか。

「食事だけ変える」「とにかく運動する」——一つの要素だけに集中したアプローチが、なぜ長続きしないのかを考えてみてください。

例えば、長時間労働で十分に眠れていない人のケースです。

睡眠不足になるとストレスが増える

→ ストレスで疲れているので運動しない

→ 食欲の制御が効きにくくなり、高脂質・高カロリーなものを食べてしまう

→ 栄養の偏りでさらに疲れやすくなる

→ 体型が崩れ、自己嫌悪に陥る

→ ストレスがさらに増える……

この状態で「運動しましょう」と言っても、うまくいかないのは当然です。システム全体が別の方向に動いているからです。

だから私が最初に行うのは、総合的な評価です。全体を把握したうえで、介入できる余地のある箇所から少しずつ働きかけていく。部分が変わると、全体が変わり始めます。変化した全体を再評価して、またその時に適切な箇所へ介入する。その繰り返しです。

このアプローチを続けると、あるものが見えてきます。自分特有の習慣のパターンです。

ストレスがかかるとチョコを食べる。疲れるとジムに行かない。こうした規則性に気づけるようになったとき、そこに介入します。チョコを家に置かない、イチゴに変える。ジムの代わりに、家でできる2分の運動にする。

大切なのは、best ではなく better。

完璧な選択ではなく、今よりちょっとだけ良い選択を取り続けること。その小さな変化が、全体を動かし始めます。

もし今、どこから手をつければいいかわからない状態にあるなら、それがむしろスタートラインです。一緒に考えましょう。